コンクリート構造物に関する主な工事

コンクリート構造物はどのようにつくられるか

コンクリート構造物には無筋コンクリート、鉄筋コンクリート、プレキャストコンクリートなどの種類があります。構造物によって必要となる工事はさまざまですが、大別すると基礎工事と躯体工事、仕上工事に分類されます。
最初に行われるのが基礎工事です。これは構造物を支える土台をつくるための工事全般を指し、具体的には建設地の地盤を整える土工事や杭を打ち込む地業工事などが該当します。

基礎工事によって構造物の土台ができあがったら、構造物そのものをつくる躯体工事へと進みます。鉄筋コンクリート構造物の場合、構造物の骨組みをつくる鉄筋工事、コンクリートを流し込むための型枠を設置する型枠工事、型枠どおりにコンクリートを固めるコンクリート工事などがあります。こうして構造物が完成したら、最後に防水工事や設備工事、塗装工事などを行います。これらを総称して仕上工事といいます。

コンクリートは地盤に埋め込む杭などにも活用されていますが、主な用途は当然ながらコンクリート工事といえます。ただし、コンクリート工事を成功させるには鉄筋工事や型枠工事が適切に実施されていることが大前提です。そのため、コンクリートの施工では、コンクリート工事だけでなく鉄筋工事や型枠工事を含めて考える必要があります。

コンクリートの施工の概要

施工計画と現場説明会

コンクリートの施工において最初に行うのは施工計画の立案です。予算や工期などの条件面、コンクリートの品質、施工の具体的方法、施工体制などについて、発注者からの要望をもとに発注者や工事監理者、施工業者などの間で詰めていきます。
施工計画が確定したら現場説明会を実施して、工事関係者全員に内容を周知させます。構造物の規模によって工事に関わる人数が異なりますが、いずれの場合でも周知が徹底できていないと施工不良や品質不良などが生じる原因となります。各工程における留意事項や注意事項などは全員が把握しいておくようにする必要があります。

施工現場での工程

施工内容を工事関係者に共有できたら、本格的な施工工程に移ります。まず実施するのは、鉄筋コンクリート構造物の場合は鉄筋工事です。鉄筋は構造物の骨組みとなるので構造物自体の耐久性に大きな影響をおよぼします。
鉄筋が組まれたら、次は型枠工事です。設置した型枠の中にコンクリートを流し込んで必要とする形状へと成形するため、型枠の変形は絶対に避けなければなりません。また、流し込んだコンクリートが型枠内の隅々まで行きわたるように考慮して、型枠を組み立てることも重要です。

型枠が完成したら、コンクリートを流し込んで固めていく工程です。これを打設といいます。使用するレディーミクストコンクリートは打設日に受け取り、受け入れ検査を実施して品質に問題がなければそのまますぐに使用します。レディーミクストコンクリートは時間経過とともに固まっていき品質に影響をおよぼすため、運搬時間などはJISで規定されています。
打設を大きく分けると、打込み(レディーミクストコンクリートを流し込む作業)と締固め(型枠内にレディーミクストコンクリートを行きわたらせる作業)です。よほど小規模の構造物でない限り、1日ですべての打設を済ませるのは不可能です。そのため先に打設してた箇所に継ぎ足しながら進めていく必要があります。これを打継ぎといいます。

打設が完了したコンクリートが所定の硬さにまで固まるには1~3カ月の期間が必要です。その間、水和反応による硬化を滞りなく進めるためには、特に乾燥や凍結の防止が不可欠となります。そのため、養生によってコンクリートの保護を行います。
コンクリートの硬化が進み、所定の強度および所定の期間に達した段階で、取り付けていた型枠を解体します。その際、露出した箇所にも養生を実施しなければなりません。こうしてすべてのコンクリートが完全に固まったら施工の完了となります。

コンクリートの施工計画を立てる

施工計画とは、構造物を工期内に経済的かつ安全性や環境、品質に配慮しつつ、施工する条件・方法を具体的に策定したものです。コンクリートの施工を成功させるためには綿密な施工計画の立案が欠かせません。

施工計画はなぜ必要か

コンクリートの施工は、その精度がコンクリート構造物の強度や耐久性に直結します。たとえ使用しているレディーミクストコンクリートが高品質であったとしても、施工に問題があった場合には、できあがった構造物は品質としては不満足なものとなってしまうでしょう。一方でコンクリートの施工では工期や予算、品質、安全性などのさまざまな要素が絡んできます。与えられた工期や予算の範囲内で安全な施工や要求された品質を実現させるには、事前にどのように施工していくのか明確にしておかなければなりません。そのために施工前に策定するのが施工計画です。

施工計画立案の流れ

①事前調査
契約条件や現場条件、設計図書、現地状況などを確認します。

②施工技術計画の立案
基本の施工方針や全体の工程計画を策定し、それに基づきコンクリート工事、鉄筋工事、型枠工事などの個別の工事計画を検討していきます。

③仮設備計画の立案
コンクリート工事にかかる直接仮設(工事用道路など)や工事全般にかかる共通仮設(現場事務所など)について検討していきます。

④調達計画の立案
工事に必要な資材や建設機械、作業員の確保・調達について検討していきます。

⑤管理計画の立案
安全な工事を実現し、経済的かつ工期内で完成させるために、安全管理、品質管理、および工程管理を検討しいていきます。

構造物に関する検討事項

目的とする構造物の建設場所や用途、形状などによって、コンクリートの種類や機能、性質を選択していきます。
【構造物に関する検討事項】

検討事項の例検討内容
建設場所はどこか・寒冷地域→寒中コンクリート
・海岸地域→海洋コンクリート
構造物の用途・一般の土木構造物や住宅→普通コンクリート
・高温や低温、火気付近での使用→耐火性や耐熱性をもたせる
構造物の形状・ダムなどの大規模構造物→マスコンクリート
・高層建築物→高流動コンクリート
・コンクリートの打設位置や高さ、速度など
・締固め間隔や深さ、時間など
コンクリート材料に関する検討事項

セメントや骨材、混和材料などのコンクリート材料に関して、具体的な内容を検討します。
【コンクリート材料に関する検討事項】

検討事項の例検討内容具体例
セメントは何を使うか種類、品質、メーカーなどポルトランドセメント、混合セメント
フライアッシュセメントなど
骨材は何を使うか種類、品質、寸法、産地など粗骨材、細骨材、山砂、海砂、川砂など
混和材料は何を使うか種類、メーカーなど・混和材:フライアッシュなど
・混和剤:AE剤、AE減水剤
コンクリートに関する検討事項

コンクリートの種類や品質に関して、具体的な内容を検討します。
【コンクリートに関する検討事項】

検討事項の例検討内容
使用材料による種類普通、軽量、舗装コンクリートなど
施工条件による種類寒中、暑中、流動化、水中、海洋コンクリートなど
要求性能による種類ワーカビリティー、スランプ、空気量、水セメント比、
単位水量、単位セメント量など
コンクリートの品質設計基準強度、塩化物量、アルカリシリカ反応の抑制方法など
施工に関する検討事項

施工条件に関して、具体的な内容を検討します。
【施工に関する検討事項】

検討事項の例検討内容
工事時期夏期、冬期、梅雨など
運搬、打設方法ポンプ、バケット、シュートなど
打継ぎ練混ぜから打設終了までの時間、打重ね時間間隔など
時間制限単位水量、単位セメント量など
養生方法、期間、型枠存置期間など
他工事との関連建設機械配置、並行工事の工程調査など
現場周辺状況騒音、振動規制、交通規制、近隣調整など

鉄筋工事

鉄筋コンクリート構造物の場合、最初に鉄筋を組みます。これは人体では骨格の役割があり、鉄筋を覆うようにコンクリートを成形することで耐久性の高い構造物ができます。

鉄筋工事の概要

鉄筋工事は鉄筋を配置するための工事で、この鉄筋の配置のことを配筋といいます。配筋の内容は設計図によって鉄筋の寸法や数量、種別などが決められているため、鉄筋工事とは設計図どおりに配筋することを言います。
配筋で使われる鉄筋は主筋と配力筋に分けられます。主筋は部位における基礎となる鉄筋で、主筋と直角に交わるように配置する鉄筋が配力筋です。
配力筋には鉄筋にかかる力を分散させる役割があります。なお、柱の場合の主筋を柱主筋、配力筋を帯筋(フープ筋)とも呼びます。また、梁の場合の主筋を梁主筋、配力筋をあばら筋(スターラップ)ともいいます。

鉄筋工事の流れ

鉄筋工事の基本的な流れとしては、まず主筋を配筋し、次に配力筋を配筋していきます。主筋同士、配力筋同士は平行して並べるのが基本ですが、その際の鉄筋の間隔のことをあきといいます。あきが狭すぎるとコンクリートの打設の際に骨材が引っ掛かったり、内部振動機を差し込むことができなくなったりするため注意が必要です。あきについてはコンクリート標準示方書やJASS 5で規定されています。

通常、主筋は下側、配力筋は上側に配置され、主筋と配力筋が交差する箇所は結束線(鉄線)で結束します。コンクリートの打設中に配筋が崩れると鉄筋とコンクリートの付着力が低下してしまうので、強固に組まれた配筋が不可欠です。そのため、結束線で主筋と配筋をしっかりと結びつけることが重要となります。

さらにスペーサーと呼ばれる器具を鉄筋に取り付けます。これは鉄筋を所定の位置に固定させるとともに、所定のがぶりを維持する役割があります。かぶりとは、鉄筋の表面からコンクリート表面までを最短距離で計測したときの厚さのことで、必要なかぶりを確保できないと鉄筋コンクリート構造物の強度低下の原因ともなります。鉄筋スペーサーにはさまざまな材質がありますが、型枠に接するスペーサーにはモルタル製またはコンクリート製の使用が原則です。このような流れで設計図どおりに鉄筋を組むことができたら鉄筋工事の終了です。

鉄筋を曲げる場合の注意点

鉄筋は曲げて使用する場合がありますが、急激な折り曲げは鉄筋のひび割れなどの原因になります。そのため、緩やかに曲げる必要があり、コンクリート標準示方書やJASS 5では曲げ方についても規定しています。また、曲げ加工は常温での実施が原則で、加熱してはいけません。加熱によって鉄筋の強度が変わってしまう場合があるからです。さらに、一度曲げた鉄筋を再びまっすぐに戻してはいけません。鉄筋は溶接しないことが原則ですが、状況次第では溶接して利用するケースもあります。溶接した鉄筋を曲げる場合には、溶接した箇所を曲げるのは厳禁です。

鉄筋をつなぎ合わせて使用する場合

施工の際に使用する鉄筋は、輸送や現場での作業性などを考慮して一定の長さ(定尺)に切断された状態のものです。しかし、箇所によっては定尺以上の長さの鉄筋を使用することは一般的で、そのような場合には鉄筋同士をつなぎ合わせる必要があります。この鉄筋同士の接合を鉄筋継手といいます。鉄筋継手の種類には重ね合わせ継手、ガス溶接継手、溶接継手、機械式継手などがあります。

〇重ね合わせ継手
鉄筋の端を平行に添わせて結束線で結束する方法
〇ガス溶接継手
鉄筋の末端同士をガスバーナーで加熱し、圧力を加えて一体化させる方法
〇溶接継手
鉄筋の末端同士をアーク溶接などで一体化させる方法
〇機械式継手
鉄筋の末端同士をスリーブ(カプラー)と呼ばれる器具を被せて接合する方法

型枠工事

型枠とは
型枠は構造物の形状に組まれた枠のことで、コンクリートを型枠に流し込むことでコンクリート構造物の形ができあがります。型枠がしっかりと設置されていないと構造物はいびつな形で仕上がってしまうため、型枠工事は極めて重要な工程です。型枠は、せき板、鋼管(ばた材)、セパレータ、緊結材(フォームタイ)などで構成されます。
せき板はコンクリートをせき止めるための板であり、直接コンクリートに触れる部分です。通常、合板やプラスティック板、鋼板などが用いられます。なお、合板は材料の樹種によってはメラミンなどの抽出物によりコンクリート面に着色や変色、硬化不良が生じる場合もあります。そこで、合成樹脂で表面加工した合板を用いることで、コンクリート表面への悪影響を低減できます。

鋼管はせき板の後ろに取り付ける補強材で、セパレータは2枚のせき板の間に取り付けてせき板同士の間隔を保持する器具です。このセパレータと鋼管を緊結材によって結合させます。このようにして強度を高めることで、型枠の変形を防いでいるのです。さらに、型枠の形状を維持するために型枠の外側に支柱を設置する場合もあります。この支柱を支保工といいます。

型枠工事の流れ

建設時に使用する型枠の形状や寸法、数量などは、設計図書をもとに作成した加工図に基づいて決められます。その内容をもとに、必要な型枠材料を加工場であらかじめ準備しておき、型枠工事を実施する際に受け取ります。
型枠工事でまず行われるのは、墨出しです。これは、柱の中心線や壁や床などの位置について設計図書をもとに床面などに墨で印をつけていく作業のことで、この印をもとに型枠を組み立てていきます。正確性を期すために型枠工事中は何度も実施します。次に型枠の土台となる桟木を設置する敷き桟という作業を行います。
次は型枠の組み立て作業です。せき板を所定の位置に組み立てつつ、セパレータを取り付けます。作業中は型枠が水平垂直になっていることを計測しながら慎重に進めなければなりません。組み立てが完了したら、鋼管と緊結材で締め付けを行います。
すべての締め付けが完了したら型枠の完成です。

レディーミクストコンクリートの運搬・受け入れ

レディーミクストコンクリートは時間の経過によって品質が低下する傾向があるため、いかにして新鮮さを保って運ぶかが重要なポイントとなります。

2種類の運搬

レディーミクストコンクリートの運搬に関しては、厳密には次の2つに分類されます。
・生コン工場から建設現場への運搬
・建設現場内での運搬
ただし、後者については打込みを兼ねた運搬である場合が多いため、実質的には打設作業の一部とみなしてもよいでしょう。

運搬時間に関する規定

コンクリートは工場での練混ぜとともに凝結が開始するため、迅速な運搬が必須です。運搬時間に関する各種規定は次のとおりです。
【運搬時間に関する各種規定】

区分JIS A 5308コンクリート標準示方書JASS 5
限度練混ぜから荷卸しまで練混ぜから打込み終了まで練混ぜから打込み終了まで
90分外気温が25℃を超えるとき90分外気温が
25℃以上
90分
外気温が25℃以下のとき120分外気温が
25℃未満
120分

ここで注意が必要なのは、JIS規格とそれ以外とでは限度時間の範囲が異なるという点です。JIS規格では、生コン工場での練混ぜ開始から建設現場での荷卸し地点までの時間を90分としています。一方コンクリート標準示方書とJASS 5での規定では、生コン工場での練混ぜから建設現場での打込み終了までの時間が90分もしくは120分となっているため、実質的な運搬時間はJIS規格よりも短いです。よって、コンクリート標準示方書やJASS 5の規定を満たすために、打込みなどに必要な時間を踏まえて運搬時間を決めるのが一般的です。

生コン工場から建設現場への運搬

通常、生コン工場から建設現場への運搬にはトラックアジテータが使用されますが、スランプ2.5cmの舗装用コンクリートおよび振動ローラ締固め工法用の硬練りコンクリートの運搬ではダンプトラックを使用する場合があります。
コンクリートのスランプや空気量は運搬中に低下する傾向にあり、運搬中においても現場に荷卸しするまでコンクリートの均一性を保持し、材料分離が生じないようにしなければなしません。

受け入れ検査

レディーミクストコンクリートが現場に到着したら、購入者(施工業者)は注文した製品の納品であることを伝票で確認したうえで要求した品質であるか否かを検査します。これを受け入れ検査といい、要求した品質から外れていた場合には不合格として受け入れを拒否できるのです。逆に、検査で合格したレディーミクストコンクリートの品質に関する責任は購入者側に移行されます。
受け入れ検査は、強度、スランプまたはスランプフロー、空気量および塩化物イオン含有量について行うことがJIS規格で規定されていますが、ほかの項目を加えることも可能です。
検査の頻度は、強度については高強度コンクリートの場合100㎥ごとに1回、そのほかのコンクリートは150㎥ごとに1回の割合を標準とします。1回の試験結果は、任意の1運搬車から採取した試料で作成した3個の供試体の平均値で表すよう規定されています。強度以外の項目については検査頻度の基準はありませんが、通常は圧縮強度試験用の供試体を採取する際に実施されます。
スランプまたはスランプフロー、空気量の許容差は下表のとおりです。

【荷卸し地点でのスランプの許容差】

スランプスランプの許容差
2.5cm±1cm
5cmおよび6.5cm±1.5cm
8cm以上18cm以下±2.5cm
21cm±1.5cm

【荷卸し地点でのスランプフローの許容差】

スランプフロースランプの許容差
50cm±7.5cm
60cm±10cm

【荷卸し地点での空気量の許容差】

コンクリートの種類空気量スランプの許容差
普通コンクリート4.5%±1.5%
計量コンクリート5.0%
舗装コンクリート4.5%
高強度コンクリート4.5%

塩化物イオン含有量については、荷卸し地点で塩化物イオン量が0.30kg/㎥以下であることとします。ただし、上限値を指定してある場合はそれ以下とします。上限値は0.60 kg/㎥以下に設定することができます。なお、塩化物イオン含有量の検査は、工場出荷時の実施で荷卸し地点での所定の条件を満たすことが可能なので、工場出荷時に検査を済ませることも多いです。

コンクリートの打設

打設とは

レディーミクストコンクリートが現場に到着して受け入れ検査で品質にも問題がないことが確認できたら、いよいよコンクリートを型枠内に流し込む工程です。これを打設といいます。打設は、打込みと呼ばれるコンクリートを流し込む作業と、締固めと呼ばれる流し込んだコンクリートに振動を与えて型枠の隅々まで行きわたらせる作業に分かれます。

建設現場内での運搬および打込みに使われる設備・器具

トラックアジテータで現場へと運ばれてきたレディーミクストコンクリートは、荷卸しとして別の運搬設備・器具に移されます。そして、流し込みを行う箇所へと運ばれ、そのまま流し込みます。これが打込みです。このときに使われる設備・器具には、コンクリートポンプやバケット、シュート、ベルトコンベア、一輪車などがあり、構造物の規模や構造にもよりますがコンクリートポンプが主流といえるでしょう。コンクリートポンプは圧力をかけてコンクリートを送り出す機器で、ピストン式とスクイーズ式の2種類があります。

〇ピストン式

ピストンを交互に駆動することによりシリンダーからコンクリートを押し出す方式です。大きな吐出圧力が得られて長距離圧送が可能ですが、圧送中に脈動が生じることがあります。

〇スクイーズ式

ローラでポンピングチューブを順次押しながら回転させて、コンクリートを連続して圧送する方法です。コンクリートポンプ以外の主な設備・器具の特徴は次のとおりです。

〇バケット

底部に開閉式の排出口を備えた容器で、タワークレーンなどで吊り上げて運搬し、目的の場所についたら排出口を開いて流し込みを行います。

〇シュート

高所から低所へコンクリートを流す器具です。管状の縦シュートとU字型の断面の斜めシュートの2種類があり、縦シュートはコンクリートを垂直気味に流し、斜めシュートは滑り台の要領で流します。斜めシュートでは摩擦による材料分離が生じやすいため、基本的には縦シュートの使用が推奨されています。なお、トラックアジテータにもシュートが備え付けられていて、荷卸しの際に使われます。

〇ベルトコンベア

硬練りコンクリートを水平に連続して運搬するのに適した設備です。打込みの際は、コンクリートを受け止めるためにバッフルプレート(当て板)と漏斗管をベルトコンベアの先端部に設置する必要があります。トラックアジテータの中にはベルトコンベアを備えたタイプもあります。

〇一輪車

人力で少量のコンクリートを運ぶ際に用いられる器具で、長距離の運搬には向いていません。受け入れ検査の際の運搬にも使われます。一輪車はネコとも呼ばれ、一輪車に荷卸しして打設箇所まで運搬することをネコ取りといいます。

コンクリートの打込み

このような設備や器具によって目的の場所までレディーミクストコンクリートを運んだら、そのまま型枠内へと流し込みます。その際、コンクリートの自重や変形が大きくなる箇所から実施するのが原則です。例えば、床板の場合、端からではなく中央部から打設します。また、傾斜がある箇所では、高い方からコンクリートを流し込むと低い方へと流れてしまい材料分離を引き起こす原因となるので、低いほうに流し込みます。

また、排出口から流し込む箇所(打込み面)までの落下距離が長すぎると、落下の衝撃が大きくなって材料分離を引き起こしやすくなります。そのため、排出口から打込み面までの距離は1.5m以下が原則です。大量のコンクリートが流れ込む圧力で鉄筋の配置や型枠が崩れることがないように排出位置にも気を付ける必要があります。
なお、打込みはあらかじめ計画した区画ごとの行い、1つの区画が終わっていないうちに次の区画の作業に移ってはいけません。また、1区画内では均一の厚さになるように水平に流し込む必要がありますが、型枠内に流したコンクリートを無理やり横移動させるには材料分離の原因となるため厳禁です。さらに、1区画が広い場合などでは、ある程度の厚さまで全体に流し込んだ後に、その上に新たに流し込む方法をとります。その際、最初に流し込んだコンクリートと次に流し込むコンクリートには時間差が生じるため層に分かれます。このように最初に流し込んでから時間をおいてさらに流し込むことを打重ねといいます。

打重ねを行う場合、その後に行う締固めで各層のコンクリートを一体化させることが重要です。しかし、打重ねの時間間隔が大きいと先に流し込んだコンクリート層の凝結が進んでしまい一体化が困難となります。そのため、打重ねで許容される時間間隔がJIS規格で定められていて、外気温25℃以下の場合は150分以内、25℃を超える場合は120分以内に打重ねを行わなければなりません。また、1層あたりの厚さは40~50cm以下を標準とします。打込み後、時間がたつとコンクリート表面に水分が浮き出てくる場合があります。これは練り混ぜ水の一部が分離して上昇してくるブリーディング現象というもので、このブリーディング水が残っているとコンクリートの耐久性を損ねてしまうため、しっかり取り除きましょう。

コンクリートの締固め

コンクリートの打込みがある程度進んだら、並行して締固めを行います。締固めとは、固まっていないコンクリート中に振動を与えることによって、コンクリート内部に残っている空気などの異物を取り除いて型枠全体にコンクリートを行きわたらせる作業です。締固めを行わないと型枠どおりにコンクリートが固まらないだけでなく、強度が著しく損なわれてしまいます。

締固めの方法は、内部振動機(バイブレータ)をコンクリート内に差し込んで、コンクリート内部から振動を与える方法やコンクリート表面から振動を与える方法などもあります。内部振動機による締固めの場合、内部振動機は垂直に挿入するのが原則で、斜め方向に挿入すると振動が適切に伝わらない箇所が生じる場合があるので適切ではありません。また、すべてのコンクリートに十分な振動が伝わるように、挿入の間隔は50~60cm以下とします。ただし、振動機が鉄筋などの設置物と接触することのないように、挿入位置にも注意が必要です。

打重ねによって層ができている場合、振動機の先端が一番下の層の10cm程度の位置まで差し込まれるようにします。層の分かれたコンクリートを一体化させるためには、最下層まで挿入することが不可欠です。また、振動機の挿入や引き抜きは、ゆっくりとい行うことが原則です。急激に動かすと挿入によって生じた穴の跡が残りやすくなるためです。また、一度挿入した振動機を横方向へ移動させてはいけません。1箇所あたりの振動時間は5~15秒程度が基本です。振動時間が長すぎると、配合条件によっては材料分離を招くこともあります。

これらの点を注意しながらコンクリート全体に締固めを施したら、基本的には打設の工程は完了です。なお、その後にブリーディング現象がある程度進んだ段階で、内部振動機を再度コンクリートに挿入して分離状態の是正などを行うこともあります。この作業を再振動締固めといいます。

コンクリートの打継ぎ

規模の大きい型枠などに打込みを行う場合、工程の都合上複数回に分けてコンクリートを打ち込むことになります。これを打継ぎといいます。打継ぎを行った場合、先に打ち込んだコンクリートと後に打ち込んだコンクリートには打継ぎ目と呼ばれる区切りが生じ、この部分は強度が下がってしまいます。できるだけ強度を維持するためにモルタルを塗布して密着性を高める方法などもありますが、そもそも構造物全体の強度に影響が及ばない箇所に打継ぎ目を設けるように、あらかじめしっかりと計画しておく必要があります。

なお、鉛直方向にコンクリートを打継いだ場合、打継ぎ目が水平となることから水平打継ぎ目と呼ばれます。一方、水平にコンクリートを打継いだ場合には打継ぎ目は鉛直方向にできます。よって、この打継ぎ目は鉛直打継ぎ目といいます。打継ぎ目の位置は基本的には次のようなルールに基づいて決められます。

・打継ぎ目はできるだけせん断力の小さい位置に設け、打継いだ面を部材の圧縮力の作用方向と直交させます。
・梁および床の場合、打継ぎ目はスパンの中央付近または端から1/4の位置あたりに設けます。
・柱および壁に設ける水平打継ぎ目は、床や梁の下端または床や梁、基礎梁の上端とします。

コンクリートの養生

打設の完了したコンクリートは、水和反応が進んでしっかりと硬化するまでの間、乾燥や凍結から保護しなければなりません。そのための作業が養生です。型枠の解体後に露出したコンクリート面にも養生が必要となります。

養生とは

打設したコンクリートが所定の硬化状態となるには、通常1~3カ月程度かかります。その間にコンクリートを保護する作業が養生です。具体的にはコンクリート表面を直射日光や風から保護し、湿潤状態や適切な温度を保つことで、乾燥や凍結を防ぎます。コンクリートはセメントと水の水和反応によって固まります。そのため、乾燥によってコンクリート内の水分が失われると、水和反応が止まりコンクリートの強度が不足してしまいます。そのため、特に硬化の初期段階に養生によって湿潤に状態を維持することが重要です。これを湿潤養生といいます。

また、低い気温(4℃以下)の環境下でコンクリートの温度が低下すると、コンクリートは凍結します。硬化の初期段階での凍結は品質面にも悪影響を及ぼすため、養生によってコンクリートの保温も行うのです。このような目的で行う養生を温度制御養生といいます。

湿潤養生の方法

乾燥を防ぐために実施する湿潤養生には、被膜養生や散水養生、膜養生などの方法があります。

〇被膜養生

コンクリート表面を水密シートで覆うことで湿潤状態を維持し、さらに養生マットで覆うことで乾燥や温度低下を防ぐ方法。

〇散水養生

コンクリート表面に直接水をかけることで湿潤状態を維持する方法

〇膜養生

コンクリート表面に養生剤を塗布して、コンクリート中の水分の放出を防ぐ膜を形成させて湿潤状態を維持する方法。

湿潤養生の期間については、コンクリート標準示方書とJASS 5でそれぞれ下表のとおりに規定されています。ただし、あくまで目安のため、環境や配合などの条件をもとに適切な期間を検討しなければなりません。

【湿潤養生の期間(コンクリート標準示方書の場合)】

日平均気温早強ポルトランドセメント普通ポルトランドセメント混合セメントB種
15℃以上3日5日7日
10℃以上4日7日9日
5℃以上5日9日12日

【湿潤養生の期間(JASS 5の場合)】

セメントの種類短期および標準長期および超長期
早強ポルトランドセメント3日以上5日以上
普通ポルトランドセメント5日以上7日以上
その他のセメント7日以上10日以上
温度制御養生の方法

凍結を防ぐために実施する温度制御養生には、保温養生や給熱養生などの方法があります。

〇保温養生

外気との接触を遮断することで温度低下を防ぐ方法。断熱シートなどで被う方法などが一般的です。

〇給熱養生

コンクリートをシートや養生上屋で覆い、その内部をヒーターや電熱線、練炭などで加熱することで温度低下を防ぐ方法。

型枠の解体とその後の養生

コンクリートの打設が完了して初期養生を行っている間も、型枠は取り付けたままとなります。強度が低い段階で外部からの衝撃などを受けるとコンクリートの変形や破損につながるため、型枠で保護するのです。また、型枠を解体するとコンクリートの露出面が増えるので、そこから水分の蒸発などが起こって水和反応が止まってしまう可能性もあり、型枠をいつ解体するかは慎重に決める必要があります。
解体を実施する時期については、JASS 5で規定されています。

【型枠の解体時期】

項目基礎・梁側面・柱および壁
セメントの種類早強ポルトランドセメント普通ポルトランドセメント混合セメントB種
コンクリートの圧縮強度・短期および標準:5N/m㎡以上
・長期および超長期:10N/m㎡以上
コンクリートの材齢日平均気温
20℃以上
2日4日5日
日平均気温
10℃以上20℃未満
3日6日8日

型枠の解体によって露出したコンクリート面にも湿潤養生が必要です。通常は散水養生やビニールシートによる被膜養生などを行います。

施工不良によって生じるコンクリートの変状

正しい施工を行えばコンクリートは高い耐久性を備えることができますが、施工が不適切な場合、できあがったコンクリートに不具合が生じるケースがあります。
施工不良で見られる代表的なコンクリートの変状が以下の2つです。

〇豆板(ジャンカ)

豆板(ジャンカ)は、打設したコンクリートの一部分に粗骨材のみが集中し、その箇所での細骨材やモルタルなどの不足によりすきまの多い状態となる現象です。豆板が生じている箇所では表面がボコボコしたような状態となるため、その見かけから「あばた」とも呼ばれます。すきまが多いことからもわかるとおり、豆板は強度の低下の原因となるので、防止を徹底すべき現象の1つです。豆板は、不適切な打込みや締固めによる材料分離が主な原因です。高い位置から落下させるような打込みや、締固め時間や間隔の不足などで生じることが多いので注意が必要です。

〇コールドジョイント

コールドジョイントは、コンクリートの打重ねでの時間間隔が大きく空いてしまった場合に先に打ち込んだコンクリートと後から打ち込んだコンクリートの境目が一体化せず、断層のような状態となる現象です。コンクリートの強度が大きく損なわれ、コールドジョイントが生じている箇所からひび割れが起きたり劣化因子が侵入したりします。そのため、打重ねを行う際は時間間隔をできるだけ短くし、各層が一体化するように締め固めることが重要です。